町屋菊一の世界 第2章

京都から全国各地で弾き語りなど行っている町屋菊一があらゆるジャンルのイチオシを紹介していきます。

人道主義者のための平成演説草案

人道主義者のための平成演説草案】

作:町屋菊一

満員電車の優先席で酒を飲む老人たち

我が物顔で幅を利かせて座っている

目の前には10時間労働の油まみれの若者が立つ

午前7時23分 地下鉄の上を走る車

その上を飛んで行く飛行機に

人々は思想も時間も委ねている

 

鏡の前に立つ自分が何故

本物の自分だと言い切ることが出来るのだろう

そんなことを証明するものもいなければ誰も考えようともしない

眠りから覚めた自分が何故現実の自分だと言い切ることが出来るのだろう

そんな事を証明するものもいなければ誰も考えようともしない

 

男女間における性的干渉からの脱却を試みたが

女に犯された十八の夜

人間の逃れられない行為だと知ってか知らずか

朝を迎えるまで求め続けた十月の末

十七の娘を買っていた男の夢は

死ぬまで自由に生きる事

買われた娘の気心知れず捜査網は張られている

 

生き損ないの若者達による訴えは

死に損ないの老人たちによりもみ消される

白紙のままの人生用紙は

大人によって黒く塗られる

そして海には灰色の朝

 

何もかも忘れてしまいたい男の恋は

忘れたい事すら思い出せぬ女の心に飲まれ行く

一日も早く死んでしまいたい女の愛は

1日でも長く生きたかった男の心に飲まれ行く

 

目に見える物も買うことのできぬ人がいるのに 

たかが空気の振動に全てをかける俺がいる

食えるものを必死に探している者がいるのに

余った飯を捨てる場所を探している俺がいる

 

くだらない干渉と理想を押し付け

満足している人道主義者と

それに苦しみながら何も言えずに

生かされている平成の軟弱者達

 

俺は人道主義者により殺された被害者の一人か

俺は人道主義者により生かされた軟弱者か

俺は人道主義者により操られたからくり人形か

はたまた俺は人々に自分の理想を押し付ける人道主義者なのだろうか

 

そんな答えは誰にもわからない

知っているのは虚偽の真実と

デタラメの人類の歴史の中だけなのだ

 

人道主義者の為の平成演説草案をここに表す

 

平成30年 5月8日